紅雛

大切なものを守っていく。

仲間 3

咲とは1年のころに出会った。
第一印象はよく覚えてない。

咲とは担当が一緒になって、よく作業をしてた。
大学の夏休みは2か月あるけど、
そんな中よく大学にきて作業してた。

吹き抜けになっていて、屋上に近い場所にある広いスペースで、よく作業をした。
材料が足りなくなったら買い足しにも行った。
手がべたべたになった。
紐で擦れて手が痛かった。
先輩と3人でよく打ち合わせをした。
すごく楽しかった。

疲れたらベンチに座って休んだり。
他の先輩からほめてもらったり。
差し入れもらったりしたな。
会議で遅くまで残ったり。
土日が活動でつぶれることもよくあった。
目標に向けて一生懸命だった。


本番を迎える直前の2か月は、講義に出てバイトして、終わったら大学に来て23時まで準備。
自分の仕事が終わったらほかの仕事も手伝った。
講義中にデザイン案練ったなー。




本番中は
朝は5時半に起きて、夜は23時半まで。
集合は7時50分だけど、確認や準備がある。当日の流れを確認したいって気持ち。それもあるけど胸が高ぶって早めに大学に行ったらそこに咲がいたり。「頑張ろうな」って声を掛け合った。
たくさん人がいるはずの空間に誰もいなくて、そんな空間を味わうような。
単にやる気が余ってただけだったりもするけど。



皆よりも朝早いからくたくたになるのに、終始走ってばかりなのに。
俺と咲が同時に休憩入りに戻ってきたときに。
「A-3が大変だから、誰かサポート入れるかな?」
副会長からの要請に、

「「行きます!!」」って声を揃えた。

お前ら今まで働いてきたじゃねえか休め休め!

そういわれても。

「「大丈夫です!!」」って言いながら勝手に準備して。

一緒に走った時かな。

こいつといて楽しいっていうか。
やる気の出方が同じで。
とにかく最高の気分だった。


A-3班の皆からは
「ゴールデンペアが来た!」って言ってもらったな。
あの布陣は最強だったな。
俺と咲がいたからね(^^)



それから。


ライバルだと思ったし負けたくないなんて思った。
それでいて、大切な仲間だと思った。


性格は正反対なのに、
熱くなれるとことか
料理するとことか
考え方とかがどこか似ていて。


でも、それはきっと俺だけだと思っていた。
こいつがいてよかったと思うのは俺だけ。
俺はすごい信頼してたし頼りにしてたけど、
咲はそうでもないんだろうなって。
というか、俺ほどじゃないんだろうなって。
咲はそんな素振りを見せたことがなかったように思う。


活動を引退するとき、伝統のようなもので
サークルのスタジャンに、後輩とメッセージ交換をするイベントがあって。
これがメインだから、スタジャンはあえて薄いカラーのものを選ぶ。
メッセージが読めるように。

場所を貸し切って、夜通しやるんだけど。
俺のところにも後輩が列を作ってくれたりして、
話をしながら俺はメッセージをかいて、そして俺のスタジャンにも後輩がメッセージを書いてくれてて。
明け方かな。

列の最後尾に、咲がいた。





普通、同年代ではメッセージ交換はしない。
あまりないことだった。
咲がわざわざ来てくれてびっくりしたし、そしてすごく嬉しかった。
あの時、本当に驚いたことを覚えてる。
わざわざそこに並んでくれてる意味。



そこで何を話したかはあまり覚えてない。
後輩と話しすぎーとかくたびれたわ(笑)とか言われたっけ。

そこで、「あたしタツルに書きたいことがある。」
そういわれて。

「それなら俺もあるよ。」
そういった。

少し時間が経ったあと、お互いのスタジャンを返した。

沢山のメッセージの中で、咲のメッセージを探すのに苦労した。







俺と同じ言葉が書いてあった。







たくさんある日本語の中で。
選んだ言葉
お互いに言いたい言葉が重なるなんて。



すっげえ嬉しかったんだ。
参る。
同じ気持ちで駆け抜けてきたんだなって。

「いっしょじゃんか(笑)」って言ってたけど
俺もびっくりしたよ。


これからもずっと変わらない。
こいつがいてよかった。
いっしょに走れてよかった。







他でもない咲だから。
たとえどんなに離れてても
おれは今日この場所にいたいって思ったよ。
余計なことを考える前に
なによりも早く「行くんだ」って思ったから。