紅雛

大切なものを守っていく。

10

話をしているとき、箸の持ち方がいつもと違っていて



にぎり箸になっていた



強く握られていて
どれほどの気持ちだったのか
すぐに分かった。



それほどの気持ちを吐き出してくれたこと
少し安心したんだよ。



だけど、

そんな現実を作り出したのは俺だよね。
俺の選択がこの現実を生み出してる。
実家で暮らす選択をしなかったのは俺だから。

だから大切にしたいと思った、なんて言えば
俺にとって都合が良すぎるよね
家族が大好きな母さんに
俺はとてもひどいことをしている。

けれど、離れていなければこんな風に大切にもできていなかったかもしれない。
その答えは俺じゃなくて母さんが決めることだけど、
俺がこれからも大切にすることでその答えを少しでもいい方向へ向けて見せたい。

そう思ってる。
そう決めてる。





眠れないなんて言うのに
この10日間はよく眠れるってぐっすり眠ってたね
眠っている時間が少しでも
癒しの時間になってくれたら、そう思って見ていた。

少し小さく見えた寝姿に
いつまでも続かない生を意識して
大切にしなきゃいけないって思わされた。




ここにきて楽になれるなら
いつでも来ていいよって言っていて
遠慮せずにこうして来てくれて安心してる。

俺が行くんじゃだめなんだよね
こっちに来ないと意味がないんだよね。




俺は大切にできているかな。
もっとしてあげられることがあるんじゃないか
今できることをしたいと
そう思ってやってるつもりでも
ほんとは足りてないんじゃないかとか
そういう気持ちでいっぱいになる。




疲れることもあった
今回だって休みを全て。

それでも楽しそうにしてるから
それでいいと思った

少しわがままを言ってひとりの時間をもらった
ひとりで過ごしてる時
振り返って
やっぱり最後の最後に一緒の時間をつくった
なんのための10日間だったか
考えると答えはひとつしかなかった。



きょうだいの温度差
同じ方向を向いてくれないことに対するもどかしさ
それでも、自分の価値観を押し付けるわけにもいかない
だから、俺は俺にできることを





これで少しでも、元気を取り戻してくれたら。





連絡もするし、美味しいものを見つけたらすぐに送るね。
美味しい、って一緒に言おうね。




親孝行になっていることを祈って。